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緊急シンポジウム

教職課程コアカリキュラム案のどこが問題か?

—パブリックコメント提出に向けた論点整理のために—

日時: 2017年6月14日(水)18:45-20:45

場所: 上智大学 四谷キャンパス 2号館3階 2-309教室

 

※ 事前申し込みは不要です。直接会場にお越しください。会場教室定員は150名です。

※ 多少延長になる可能性がございます。

※ 会場となる教室は18:30まで授業で使用中のため、それまで入場していただくことができません。早く到着された方は、2号館5階の学生食堂などをご利用の上お待ち下さい。

主催:上智大学 課程センター

共催:東京地区教職課程研究連絡協議会(東教協)

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【開催趣旨】

 周知のように、教職課程で共通的に身につけるべき最低限の学修内容(コア)について検討してきた文科省の「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会」(及び、その中に設けられた「教職課程の目標設定に関するワーキンググループ」)が、その案をとりまとめ、5月27日に同省初等中等教育局教職員課によってパブリックコメントの募集が開始された。

 このパブコメ募集にあたって、同課は、“平成27 年の中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」において「大学が教職課程を編成するにあたり参考とする指針を関係者が共同で作成することで、教員養成の全国的な水準の確保を行っていくことが必要である」と提言されていることを踏まえ”、教職課程コアカリキュラムに関する検討が進められ、その案が取りまとめられた旨を記している。だが、この案は、今後の日本における教員養成や大学教育を考える上で、看過することができない問題を数多く抱えている。

 そこで6月25日に迫るパブコメ募集の締切を見据えて、緊急シンポジウムを開催し、この案が持つ問題点に関する認識を深め、全国の教職課程担当教員がパブコメを提出する際の有意義な参考資料として役に立つような論点整理を目指すこととした。

 登壇者には、上記ワーキンググループ委員として案の策定に携わってきた酒井朗氏、昨今の教育政策や教育改革動向に関して積極的に提言を重ねてきた日本教育学会会長の広田照幸氏、さらに、国立教員養成系大学や私立大学の教職大学院で教員養成に長く携わり、教員養成改革が孕む諸問題を鋭く指摘してきた油布佐和子氏、以上の3名を迎えて、パブコメに向けた論点整理に資する活発な議論を目指したい。

 なお、このサイトに後日、緊急シンポで整理されたパブコメ提出のための主要論点を掲載する予定である。

※ このシンポジウムをもとに、本WEBページ下段に、パブコメ提出のための主要論点を整理したので、ぜひご参照いただきたい。

【発表タイトル及び登壇者プロフィール】

教員養成像の貧困―教職課程コアカリキュラム案を読む―

 

広田 照幸(日本大学文理学部教授、日本教育学会会長)

教職課程コアカリキュラム作成の経緯について

酒井 朗(上智大学総合人間科学部教育学科教授、中央教育審議会教員養成部会臨時委員、教職課程の目標設定に関するワーキンググループ委員(第1ワーキンググループ副主査))

教職課程コアカリキュラム―日常的な統制という問題―

 

油布 佐和子(早稲田大学教育・総合科学学術院大学院教職研究科教授)

コーディネーター:澤田 稔(上智大学 総合人間科学部 教授)

【パブリック・コメント提出に向けた論点整理(例)】

—以下に示したのは、緊急シンポジウムで提示された論点や、シンポジウム後の会話で出された論点・視点等を若干補足・敷衍して整理したものです。

—こちらの確認不足で、この他にもあるかもしれません。もしこれらの他にも掲載すべき論点がありましたら、下記フォームからお知らせください。

—ここでは全体目標、一般目標、到達目標の具体的な文言の修正提案は含まれていません。特に、到達目標は十分練られたものとは言えない構成・内容が散見されるので、これらはあくまで例示・参考事項のレベルに止め、課程認定基準とすべきではないという趣旨の論点を示すにとどめています。が、これら目標の文言に関して具体的な修正を求めるパブコメも可能であり、重要かもしれません。これに関しても掲載すべき論点がありましたら、下記フォームからお知らせください。

—どの程度の頻度で更新できるかは不明ですが、可能な範囲で加筆修正させていただきます。(澤田)

  • 教職課程コアカリキュラムは、十分に学問的な根拠があるものとは言えず、その発想自体を問い直すべきであり、その意味では、導入そのものを見直す、または延期すべきである。標準化によって、得られる利得よりも、意図せざる負の結果の方が大きい。

  • 教職課程コアカリキュラムは、医学部や獣医学部のコアカリキュラムをモデルとして策定が始まっているが、医学部や獣医学部は開放制では行われていないものであり、開放制教職課程を尊重・維持する限り、モデルにはなりえないものと考えるべきであり、その発想を根本から見直し、一旦白紙に戻し、各大学の教職課程担当者のヒアリングを十分に行った上で、策定を進めるべきである。

  • たとえ、教職課程コアカリキュラムが導入されることになっても、その内容は、全体目標及び一般目標のみとし、到達目標は削除すべきである。または、到達目標は、全体目標及び一般目標に基づいて、各大学の裁量範囲で設定できるようにすべきである。

  • 特に、今回の教職課程コアカリキュラム案の到達目標は未整理で、不分明なものが非常に多いので、たとえ教職課程コアカリキュラムに到達目標が書き込まれるとしても、あくまで例示、参考事項に過ぎないことを明記すべきである。

  • 今回の教職課程コアカリキュラム案の到達目標の中には、WGの委員によって検討され、提案されたものではない内容が一部に付け加えられている箇所(たとえば、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」(3)学校安全への対応 到達目標 “2)生活安全、交通安全、災害安全の各領域や我が国の学校をとりまく新たな安全上の課題について、安全管理および安全教育の両面から具体的な取組を理解している。” における “我が国の学校をとりまく新たな安全上の課題について”)があるが、そうした箇所に関しては、どの立場によってなぜ付加されたのかの説明が必要であろう。その点でも、このコアカリキュラムの導入は時期尚早である。

  • 教職課程コアカリキュラムは、大学の自主性や独自性を阻害する危険性が十分にあるので、「告示」という法的な位置付けをあたえられるべきではなく、あくまで「試案」や「手引き」としての位置付けを明記して公表されるべきである。

  • あるいは、教職課程コアカリキュラムがたとえ「告示」されることになるとしても、大学の自主性や独自性を阻害することのないよう、それは課程認定の基準ではなく、あくまで指導助言の基準として位置付けることを明記すべきである。

  • 教職課程コアカリキュラムの前文においては、「大学の自主性や独自性が教職課程に反映されることを阻害するものではなく」という消極的な表現ではなく、「大学の自主性や独自性を最大限尊重することを前提とする」というより積極的で、明確な表記をすべきであり、同時に「開放制教職課程の意義を最大限尊重する」という表現も明確に書き込まれるべきである。

  • 英米等でも教師の資質向上策のためのstandard策定は行われているが、それはあくまで「教師という職業に何が求められているか」の基礎であって、教職課程コアカリキュラムに見られるような細分化された指導項目にしか見えないものではない。それは、アメリカのInTASCやイギリスのStandard for Professional Developmentを見ても明らかである。その点でも、日本におけるこの教職課程コアカリキュラムのスタイルは抜本的に見直すことにして、実施を見送るべきである。それが難しい場合には、あくまで「試案」の水準に止め、そのことを明記するべきである。

  • 今回の教職課程コアカリキュラム案の細分化された項目列挙のスタイルでは、画一的な教員しか生まれない。現代社会に求められている能力は創造性・革新性なので、教育は破綻する

  • 英語に関しては、教科に関する科目に関しても、教職課程コアカリキュラム案が策定された。しかし、教科に関する科目に関して教職課程コアカリキュラムを定めることは、開放制の大学の学科専門科目を統制することになり、大学教育の自主性や独自性が損なわれることとなる。また、そのことを恐れて、これまですぐれた教員を輩出してきた大学の多くが教職課程を廃止することも危惧される。それは大学における教員養成の質を期せずして低下させることにつながりかねない。今回英語に関して策定されたような教職課程コアカリキュラムは、他の教科も含めて断じて避けるべきである。

  • 外国語(英語)コアカリキュラム案に関しては、たとえいわゆる「大くくり化」の原則に一定の意義があるとしても、「外国語/英語科に関する専門的事項」は、「大学の自主性や独自性が教職課程に反映されることを阻害する」ことになりかねないので、あくまで例示、参考事項に過ぎないことを明記すべきである。ましてや、「外国語/英語科に関する専門的事項」として示されていることを、課程認定の基準とすることは絶対に避けられるべきであり、あくまで指導助言の基準として位置付けることを明記すべきである。

(補足)

  • パブリック・コメントは、教員養成関係者だけでなく、一般の市民が積極的に提出してよいものである。したがって、友人や家族の賛同を得て、教職課程コアカリキュラムの導入は時期尚早だとか、教職課程コアカリキュラム案は一旦白紙に戻すべきだとか、教職課程コアカリキュラム案は撤回し、英米で見られるような資質・能力基準のような大綱的なものにすべきだ、といったよりシンプルな意見を、送ってもらうという方法も有効である。

  • また、パブコメだけだと意見を届けることは困難なので、メディアなどを使った問題提起や政治家への陳情が重要。一部の議員には「難しい」と言われても、党派を超えて問題意識を持っている議員とつながり、そうした議員が働きかけてくれると、それなりに圧力にはなる。 

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